家庭医療県内診療所見学ツアーの開催案内

 平成30年8月1日に、医療法人・社団弓削メディカルクリニックを研修会場として、平成30年度研修医県内定着事業を開催いたします。

 参加希望の医学生等の皆様は7月25日(水)までに申込願います。詳細は、下記開催要領のとおりです。

 

                       記

県内定着支援事業開催要領

 

1.主 催   日本プライマリ・ケア連合学会滋賀県支部

 

2.開催日時  平成30年 8月 1日(水)8:00~17:00

 

3.開催場所 

(1)(医療法人・社団)弓削メディカルクリニック

( 滋賀県蒲生郡竜王町大字弓削1825番地 )

(2)竜王町国民健康保険診療所

( 滋賀県蒲生郡竜王町大字山之上1247-2 )

 

4.対象者   

○滋賀県および近畿府県の研修希望医学生 20名

 

5.目的/内容

(1)バスツアーによる滋賀県内の家庭医療診療所の視察を通じて、滋賀の魅力を研修参加した医学生に経験してもらう。

(2)各診療所の指導医や専攻医との交流を通じて、診察室、具体的な工夫やコツ、グループ診療や多職種連携など幅広い知識と体験をしてもらう。

 

6.スケジュール

  8:00        近江八幡駅(南口)出発

  8:30        弓削メディカルクリニック(MC)到着

8:30~12:00  午前コンテンツ開始

12:00~13:45  バスにて昼食会場に出発~弓削MC到着

13:45~15:30  午後コンテンツ開始

15:30~15:45  バスにて出発~竜王町国民健康保険診療所到着

15:45~16:30  診療所館内案内および説明

16:30        診療所出発

 17:00        近江八幡駅(南口)到着 解散

 

 

以 上


バスツアー診療所見学体験者の感想報告

去る8月1日()、バスツアーによる「診療所視察」を、弓削メディカルクリニック様をはじめとした関係施設の方々のご協力で体験させて頂き誠にありがとうございました。

以下、本企画参加学生による当日の研修内容・感想を記述致します。

 

〇部署別研修

外来診療(弓削メディカルクリニック)

 診察室に入って、部屋の色調は落ち着いた色であること、個室にできるようドアがきちんとついていること、机は医師と患者が話しやすいとされる角を挟んだ状態になれるように形になっていることなど、デザインが非常に工夫されていることに驚きました。また、そこで行われた問診は私が今まで見てきた大学病院のものとはまた異なり、患者さんが抱えておられる数多くのプロブレムリスト一つ一つについて丁寧に検討し、聴取されているという印象を受けました。一部の疾患を専門的に検討するのとは違い、様々な疾患について総合的に問診することで、疾患だけではなく患者さん自身の生活や精神状態を把握することができ、個々人にとっての最良の治療・対応を選択できるのが家庭医療の強みなのかと感じ、非常に勉強になりました。

 

・外来診療(竜王町国民健康保険診療所)

 山之上の診療所では、雨森先生の外来見学をさせて頂きました。最初に雨森先生にお会いした時の印象は、とても偉大な方だと聞いていたので、オーラのある方に違いないと思っていましたが、とても静かで物腰が低く、この方が本当に院長なのかと疑うほどでした。しかし、外来が始まるとその印象は一変しました。私は外来の様子を先生の後ろから見学していたのですが、まるで喜劇が始まったのかと感じる程に雨森先生の声色が変わり、先生の表情も多彩に変化しているのが想像できました。その診察を受けている患者さんはもちろんのこと、私も一緒になって外来を楽しみました。さらに、雨森先生の外来で気になったのが、患者さんの生活について事細かに聞くことでした。「今朝は何をしていたのか」、「今の時期は畑仕事をしているのか」程度の質問なら普段の様子を知るためだろうなと想像できましたが、雨森先生の質問はそこに留まらず、「誰と、どこで、何をしていたのか」、「それはいつの話か」、「誰が何と言ったか」、「野菜は何を植えているのか」というような聞いても意味があるのかと思ってしまう内容でした。そのときは話題提供のためなのかと思っていましたが、後から“認知症のスクリーニング”をされているとお伺いし、とても感銘を受けました。他にも、頭の中の家系図や地図で患者さん同士が繋がっていたり、何年も前のことをそれぞれの患者さんと共有できていたりする記憶力にも驚きました。雨森先生の外来は驚きと感動にあふれた外来でした。

 

・通所リハビリ

 リハビリはうす雨宿り通所リハビリを体験させていただきました。

 昨年、高槻の通所リハビリを行なっている施設に見学に行ったのですが、いかにも施設のような場所で、利用者の方も作業のようにリハビリをされていたのを覚えています。しかし今回の見学で、本当に感激したのは、施設の方と利用者の方の関係性でした。施設が民家を改造して作られていることもあり、家族のような関係性を築いていて、このような場所で医療をしていきたいと思いました。

 

・訪問看護

 私は診療所ツアーに看護師に付き添い地域のグループホームと祖母とそれを介護する娘が住む一件屋の2箇所で訪問看護の現場を見学し、また看護師からも日々の業務や経験など様々なことを教わることができました。

 訪問看護の業務は入居者のバイタルなどを測定しつつ、日々の生活で困ったことはないかを確認し、介護者の相談に乗ったり負担が過剰になってないかを確認したりすることでした。その様子を見て入居者の健康や安全を管理し可能な限りベストな余生を過ごせるようにすることはもちろん、他に介護者や親族の方々にとって気軽に相談でき何かあったときに頼れる存在として訪問看護師がとても大切な存在であることを理解できました。また、訪問先の中にはしばしば介護者にその余裕がなく十分な介護がなされていないところもあるそうなのだがそういった現場を早期に発見できることでも有用であるとわかりました。

 

・ファースト薬局

 ファースト薬局は、弓削メディカルクリニックさんに隣接している調剤薬局で、訪問薬剤管理指導などにも積極的です。私が訪れたときには、事務の方も含めて、45人の方がいらっしゃいました。薬局の中は、一包化マシンや個数計量機械、散薬分包機などの機械がありました。あまり他の薬局の中を見学させていただいたことがないため、他との比較をすることができませんが、薬局の中自体は他の薬局とよく似たものであると感じました。一包化の業務をお手伝いさせていただきながらお話をお聞きしましたが、処方するだけでなく服薬がしっかりできるようにするということが今後の高齢化社会においては重要であることを感じました。

 ファースト薬局は、弓削メディカルクリニックとも非常に距離が近く、密な連携が取れていることをお話からも実感しました。地域を支えるチームが診療所内だけでなく、薬局も含めて出来上がっていることが、素晴らしいと感じました。

 

◯訪問診療前カンファレンス

 訪問診療の前の医師、看護師のカンファレンスに参加しました。訪問看護や訪問介護を行なっている看護師や介護士からの情報提供も行われており、より患者さんの生活に寄り添ったカンファレンスであるように感じました。高齢で複数の疾患、既往歴を持つ方も多く、全身を総合的に診ることの重要性も学びました。訪問診療は大学病院の実習では経験する機会が多くないため、今回訪問診療のカンファレンスに参加できたことはとても有意義な経験になりました。

 

〇弓削メディカルクリニック 院内見学

 弓削メディカルクリニックには診療室、処置室、医局の他にレントゲン、内視鏡などの検査機器が設置されていました。施設内には思慮の上構造された設備が多くあり、説明を聞いていてとても感銘を受けました。特に医局には個人のデスクがなく、開放的でコミュニケーションを取りやすい環境であることなど、1人になりやすい環境を作らないまたは同じ職種のみで強くユニットを形成しすぎないことに配慮されていたことが印象的でした。より機能的で、多くの工夫がなされた施設内はとても魅力的でした。

 

〇竜王町国民健康保険診療所 院内見学

 特に印象に残ったのは、外来リハビリの設備です。2部屋あり、一方の部屋には理学療法士による施術を受けるためのベッドが、もう一方には自ら様々な運動を行なうための器具が備えられていました。外来リハビリについてあまり知識がなく、外来リハビリと、弓削メディカルクリニックに隣接している施設で行われているような通所リハビリは、どう違うのかと疑問に思ったので、理学療法士のスタッフの方に質問させていただきました。外来リハビリは医療保険、通所リハビリは介護保険の対象であることがまず大きな違いだそうです。外来リハビリは、通院しながらリハビリを受けることができ、通所リハビリは、通院しなくとも生活の中で介護の一つとしてリハビリを受けることができます。

 リハビリは、3次予防として、プライマリケアにおいて重要な役割を果たします。今回の実習で、普段の勉強では滅多に触れることができないリハビリの分野についても、実際に見て学べたことは、貴重な経験でした。

 

 

 この度、診療所ツアーで大変お世話になりました弓削メディカルクリニックの皆様、また支援してくださった日本プライマリ・ケア連合学会滋賀県支部の皆様に心よりお礼申し上げます。

 全国には少人数で診療所実習をさせていただける施設はありますが、こんな13人という大人数は珍しいと思います。少人数だと先生からみっちり指導していただけますが、大人数でも仲間とディスカッションしたり、また違った学びがあったのではないかと思います。部署見学では先生方にはもちろん、コメディカルの方々にも温かく指導していただき、実りが多い実習だったと口を揃えて言っておりました。院内見学や訪問診療前カンファレンスではいつも見る大学病院との違いや先生方の熱い思いによって実現された施設の設計、実際の多職種連携などをみて興奮しました。

 今回の経験により、普段の勉強の理解がより一層深まるものになると思います。これからも家庭医療を学び、将来に活かせるよう、また家庭医療が少しでもたくさんの人に知ってもらえるように精進していきます。

 

 ありがとうございました。