平成27年7月12日 滋賀県 専攻医研修会 (記録)

講師  蒲生医療センター 北川 貢嗣  先生

  

【在宅医療】

●もやっとした事例の共有

 Aグループ

 ・在宅医療に限らないが、患者・家族との方針決定の場面において、自分は患者の状態に合わせて最も適切だと思う方法を元に選択肢を出しているが、自分としてはその一番いいところに落とし込む方向でやっている。飲み会の場で聞いてみると、他の先生はもっとフラットにやっている印象だった。落とし込むような説明の仕方をしていないと聞いた。自分の中で一番いいものはあるので・・・すごくもやっとした。

 →患者・家族が何を希望しているかが自分の考えと食い違っていても、まずは家族の方針でやってみる、行き詰まった時に改めて案を出すということで関係性が築かれるという側面もある。

 ・advanced directiveの時や、急変時の在宅継続や搬送の判断。

 ・管理指導料;月末に新規があるとその間に数回行かないと行けないというもやっとがある。

 ・90歳の心不全の在宅医療;60歳だが80歳くらいに見える娘、働いていない孫の3人、1Kのアパート、入院時から見ていた。在宅に帰る方向で調整したが、入ってみると本当に環境がひどく、ゴミ屋敷に近い状況。家がよかれと思って方針を決めたが、自宅の協力体制が整っていないと難しいと感じた。ゴミを捨てる、カーテンをあけるなどのことをお願いするが、それは実施されない。なぜそうなるのかも見いだせず、理解できない。

 →その人にとってはゴミが意味があることもある(認知症患者で、外から毒が入ってくるという妄想のため、ゴミを使って防御している、とか。→ゴミをいたずらに片付けると本人が不穏になる)、その意味を見るという視点もある。

 ・3ヶ月に1回の訪問リハビリ、マネジメントが不十分に見えるが、主治医は別…。もやっとした。

 

 Bグループ

  ・グループホーム入所中、食事・水分取れず、キーパーソンは遠方。点滴を連日するのか?などを悩んでいたら、療養病床が近くで空いたため、入院となった。ほっとした一方でこれでよかったのか?

 ・HOT中の最気管支炎、酸素10L、非がん患者のターミナル、病院で病状説明は無かった。こちらでどう伝えていくか?

 →在宅は下請け、という側面はある。こういう非癌患者のターミナル、なかなかそんなの色々きけない、というのはある。

 ・検査が無いままの見切り発車治療へのもやもや。

 →これはあります。

 ・地域のリソースがわからないまま初回訪問をしなければならないもやもや

 →これは初回患者の訪問もあるし、はじめて赴任した地域の訪問でもある

 ・グループホームはもやもやしやすい。キーパーソンの遠さで連絡が取りにくい。施設のトップの方針や現場の職員の熟達性なども影響してしまうため、決めにくい。キーパーソンが多いという側面もある。


まとめ

指導医陣から

・自分が相性の悪い医師とどうやって交代するか?そこが非常に難しい

・家庭医として診療を行うことは多様性を受け入れることだと思っている。病院勤務医時代は病気を治すことが主になっている。そのために情報を提供しているというところがある。家庭医としてやっていると必ずしもそうではない。自分の価値観もみんながそう思っているものではないので、他の人が思っていることを受け入れるのが患者・家族の納得の近道なのかな?と思うようになった。私がもやもやするのは意思決定する人が誰もいない時。独居・胃がん末期・本人が認知機能低下でおこってしまっており、対話もできない、状態確認のためだけに訪問診療をしていた。

松村先生

・このもやもやはずっと続いて行く、それを解決することで次のステップにいけると考えてもらえたら。一人で考えていると偏ったものになるのでカンファレンスや発表の場があるといろんな意見が聞けていく。こういった場の継続が重要。

雨森先生

・もやっとするところはみんなもやっとしている。これだけ色々出るということはみな同じようなところでもやっとしているのだと思う。専攻医1年目でも指導医でも10年目、20年目でも違うと思う。一人で考えているとしんどくなる。回りの指導医と話す。在宅では他職種の方がいる、はじめは顔の見える関係ではないが、そういう人と一緒に仕事をすることで繋がりが見えて仕事もしやすくなっていく。家庭医・在宅医療をしている場合はその他職種との連携がキーワードになる。そこを考えながら、他の人にもふることが重要。そうでないとしんどくなっていく。そうしながらやっていくと良い。

中村先生

・こういう話し合いがあるとすっきりする。はじめていぶきに行った時に、よく話していたのは点滴の裁量を一人では悩んでいたが、二人で話すようになってお互い話すようになった。もやっとし続けていてよいことだと思う。色々な人生観がある、それを僕らが勉強させてもらっていて、それを専攻医の先生方も吸収して人生の糧にしてもらえるとよい。壁も成功ももやもやも失敗も含めて楽しんでもらったら。

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